スイート・ホーム オフライン

小説原案エピソード(1)

小説「スイート・ホーム」は原案となるエピソードをみなさまからお寄せ頂きました。

それらの中から原田マハさんが特に共感した3点を紡ぎ、世界に二つとない小説に仕上げたものです。

このページではそのうち高橋 愛さんがお寄せ下さった小説原案エピソードをご紹介します。

小説原案エピソード(1)高橋 愛さま「赤い屋根」

私は、30年前小学校2年生の時から隣町である中山五月台で過ごしました。父・母・私・弟の4人で暮らしていました。家は赤い瓦の家でした。大学生になり、怒る父を半ば無視して家を出、一人暮らしをしました。その後、職に就き、実家からは遠ざかる一方でした。弟も関東に就職し実家からは遠ざかっていました。

9年前父が病気であることがわかり、2年間の闘病の後、「ずっと、大好きなこの家でいたい」と、赤い瓦の家で亡くなりました。父が亡くなるまでの間、ばらばらになっていた家族が再び赤い瓦の家に集い、力をあわせました。私は、父が亡くなる半年前に結婚し、今5歳の息子がいます。

7ヶ月ほど前に山手台に引っ越してきました。また赤い瓦の家です。そして、我が家からまっすぐ西を見れば、父・母・弟と過ごした実家のある五月台が見えます。小さい頃今と同じ赤い屋根の下で過ごしたことや、父の反対を押し切って一人暮らしをしたこと、そして父が家で死にたいと言ったこと、みんな家で看取ったことを思い起こしながら、そして、独りになった母が今何をしているかな?とか思いながら、我が家の窓から西を見て、五月台の中の今は少し色あせてオレンジ色になった屋根を息子と探しています。

我が家の赤い屋根と実家のオレンジ色の屋根の間には見えない橋が架かっています。

エピソード採用に至った理由(原田マハさんより)

このエピソードを読んだときに、真っ先に「赤い屋根の家」が目の前に現れました。主人公の暮らす家は赤い屋根の家にしよう、とすぐに決めました。それから最後の一文、「赤い屋根と実家のオレンジ色の屋根の間には見えない橋が架かっています」には、まるで虹の橋が架かっているかのような、とても美しいイメージが湧きました。ラストシーンにこの一文を登場させたいと思い、最後のシーンが浮かびました。坂下さん(陽皆)の言葉と合わせて、高橋さんのこの一文をもってしめくくろうと決め、そこに向かって物語を走らせたという感じです。